
「未来への投資の覚悟」10年後を見据えた山本金属の挑戦
大阪で知る人ぞ知る急成長中の企業、株式会社山本金属製作所。10年前、何もないところから研究開発センターを開設。依頼、次々と革新的な経営手腕で成長を遂げてきたその秘密に迫ります。

聞き手:ものづくりの経営 石中達也
話し手:株式会社山本金属製作所 代表取締役 山本憲吾様
10年後のあるべき企業の姿を描ききる
石中達也(以下、石中):岡山で研究開発センターをお持ちで、日々技術開発を行なっていらっしゃるかと思いますが、10年前にスタートされた際には、何もないまままず設立されたと伺いました。貴社と言えば、2015年に販売された、切削加工・摩擦攪拌接合用の無線式工具ホルダ(MULTI INTELLIGENCE®︎)が有名で、異常検知や工作機械との連携動作が可能で、切削加工の高度化デバイスの提供を行っていらっしゃるかと思います。このMULTI INTELLIGENCE®︎も岡山から生まれたと伺っておりますが、10年前から今を想像されてスタートされたのでしょうか。
山本憲吾社長(以下、山本社長):10年前にはMULTI INTELLIGENCE®︎が生まれることも、現在の研究開発センターになることも想定していませんでした。今の会社の主軸となる商品や会社のブランディングの基礎が現在、結果として研究開発センターからできている事はありがたいです。
石中:ではなぜ10年前にそのような大きな投資や決断ができたのでしょうか。
山本社長:結果だけ見れば、過去の投資が今の利益率を支える会社の既存の商品開発に繋がっていますが、10年前の先が見えない状況でも「未来への投資の覚悟」を行い、未来を信じて勝負をする気持ちを持てたからだと思います。当社は、常に次の10年後を見据えての商品開発、営業体制、工場の最適化を行なってきました。具体的には、売上の7%を研究開発費にあてることを決めてきており、それが現在の研究開発に繋がっていると思います。
石中:売上の7%はすごいですね。売上研究開発費率はあのトヨタ自動車で7.09%ですよね。
経済産業省のデータでも、中小企業では売上研究開発費率が0~1%の企業が34.8%で最も多く、次いで1~2%の企業が19.5%、2~3%の企業が11.4%となり、3%未満の企業が7割弱を占めている。大企業では0~1%の企業が42.1%、1~2%の企業が17.9%、2~3%の企業が11.4%となり、3%未満の企業が7割強を占めています。
そこまで売上高研究開発費率を高めていける財務状態をどのように作られていますか。

無駄をそぎ落とし、利益と研究開発への投資を両立
山本社長:会社として常に研究開発費を確保することを意識して無駄な費用は生み出さない事はまず徹底しています。例えば、設備導入に関しても、既存品だけで判断するわけではなく、最終的な目的から考えて既存のモノを合わせて製造するなど設備導入の費用をいかに下げるのかを現場レベルで考えて出来る体制を整えています。
また減価償却も通常とは異なるやり方を行なっているかと思います。例えば、通常12年、もしくは7年、最短でも5年などで行っている機械設備の減価償却ですが、当社では早ければ1年、2年で減価償却しています。これは不景気がいつ来るかわからないので、早めに償却できるものは償却する前提で、設備導入の判断や原価計算を行っています。それでできるような見積りや採算も計算しています。利益があった場合でも減価償却を早くできる為、税金の支払いも減り、より利益の残る体制ができると思います。
あとは製造のルールですね。当社では基本的には、原価計算に合う製造だけを行うと決めています。不景気の時には、原価割れに近い場合でも、受注して、生産の稼働率を下げないようにする企業様もあるかと思います。利益率が少ない受注が増えると、従業員の負担も多くなる為、結果として社員の離職などに繋がってしまうなど悪循環になる可能性があります。そこに手を出さないようにするのも覚悟を持つことも重要だと思っています。
また、売れる製品・サービスづくりを信念を持ってやっているのか、売れる商品をつくり続ける環境をつくることが経営者の仕事だと思っています。
石中:ある意味、ルールや覚悟など、研究開発に取り組む大切さをご認識されて行動され続けているので、今があるのだと理解できました。ちなみに、研究開発が実際に事業に繋がるのか、ある意味新規事業の位置付けも多いと思っています。山本社長は今まで失敗しているような新規開発事業がないようにお見受けしますが、新規事業を進めていく上のポイントなどはありますか。
山本社長:そうですね、例えば新規事業になるかどうかは分かりませんが、常にキートレンドを頭の中にインプットをして意識し続けています。例えば、今から6年ほど前にから抑えている4大トレンドが「無人運転」、「新素材」、「3Dプリンター」、「ロボット」を意識しています。意識することで情報が集まってきます。社内の営業部署でもモノを基軸としたコンサルティング提案をお客様に行っていますが、そのような動きの中でも情報は集まってきます。
石中:山本社長はいつも手帳にアイデアを書かれている印象ですが、常にアイデアが思い付くのでしょうか。
山本社長:そうですね、例常に新しい業界、商品の開発のことを考えています。ものづくりで何ができるのかを常考えて、そして形にしたいと思っています。例えば農業などにおいても、知り合いの農家から相談を受けて何か解決できないかと考えているうちにアイデアが浮かぶケースが多いです。従い、自分が思い付くよりも、モノづくりで目の前の課題を解決できないかを考えて、それを研究開発センターで実証実験を行う、このサイクルを素早く回すことで、ある程度確度の高いものが生まれてきているかと思います。
石中:2021年5月末の決算が創業の中で過去売上、最高益であると伺いましたが、コロナ禍の中で、なぜそのような形ができたのでしょうか。
山本社長:10年前から取り組んできたことがたまたま結果として出ただけで、社員が頑張ってきただけなので、最高益だろうと何も価値がないと思っています。次に向けて今までの事は忘れて0から次の10年に向けて動いていっています。
石中:今までやってきたことを忘れて、次にまた取り組まれるのですね。次に向けてはどのようなことをお考えですか。
山本社長:真のエンジニアリング企業を目指しています。その為には、デジタル化を取り入れること、また優秀な人財を抱えることが重要です。例えば、製造業で人財が重要だとほとんどの企業様がおっしゃるかと思いますが、そこにどれだけ取り組んでいるかが重要です。
石中:確かに、良い人財の確保は必要ですが、なかなか採用や教育、育成にお金をしっかりと掛けている企業様は少なく感じます。
山本社長:私自身は、今後デジタル化が進むほど、モノづくりができる人財の重要性が高まっていると考えています。つまり良いモノを作れる人財を何人確保できるかは今後より重要になってくるかと思っています。今日本の中でモノづくり人材のレベルが下がっているように感じています。だからこそ、今後の10年は自社だけでなく、若手技術者の育成に力を入れたいと思っています。
石中:今後は山本金属製作所がものづくりだけではなく、世の中の技術者育成にも力を入れられるのは楽しみです。また技術者育成の取り組みに関してはぜひお伺いさせてください。
株式会社山本金属製作所について


山本金属製作所は創業当初より、精密油圧機器部品、工作機械部品、輸送機器部品・医療機器部品等の様々な部品加工を手がけることで切削加工技術及び接合技術を高度化させてきた。また加工品質に影響を与える加工中の加工現象を把握するため、自社で独自に計測機器や加工モニタリングツールの開発を行い、計測評価技術の高度化にも力を入れてきた。これら計測技術を用いた加工現象の「見える化」と長年培った加工技術を組み合わせることで、あらゆる加工状況に 対する最適加工条件の導出や加工トラブルの回避に取組み、他社との差別化を行うと共に、日本のものづくり基盤技術の高度化を目指している。
大阪の本社工場を中心に、岡山研究開発センターにて次世代技術の研究開発、大物精密加工部品の生産拠点として松江工場、さらには東南アジア市場開拓に向けたベトナム拠点で事業活動を行っている。
会社名:株式会社山本金属製作所
所在地:大阪府
代表者:代表取締役社長 山本憲吾
URL:https://yama-kin.co.jp
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