ものづくりの経営

角野バストアップ

『失敗することを恐れない』 社員一丸となって取り組む町工場の新しい挑戦

聞き手:編集部・松本
話し手:日本ツクリダス株式会社 代表取締役社長 角野嘉一様
                
経営戦略部 広報 神岡真由子様

大阪府の日本ツクリダス株式会社様は「町工場のイメージを変えていきたい!」と、従来の町工場の集客方法や勤務環境の改善等、新しいチャレンジに積極的に取り組んでいます。その決断に至るまでの経緯と、取り組みの内容を詳しくお伺いしました!

―――本日はよろしくお願いします。はじめに、角野社長が起業されるまでの経緯について教えてください。

角野社長:大学卒業後、中古車の買取り会社にて査定士をしておりました。5ヶ月程働くうちに成績も社内トップに上がっていくにつれて、会社の方向性に違和感を抱くこともあり、半年程で退職してしまいました。次に、大学時代に関わりがあったスノーボード会社と縁あってアルバイトを始め、そこで旅行事業部の立ち上げに参画させていただき、会社ホームページを立ち上げるなどして3年働きました。その後、父の会社に入社し10年間、製造業に携わることになりました。元々は1社のみの下請けだったのですが、会社ホームページを立ち上げ、集客を行い、取引先を100社まで増やすことができました。そして、その100社のお客様をそのまま引き継ぐ形で、私が独立して今の会社でも引き続きお取引させて頂いております。

 

―――起業された理由は何ですか。

角野社長:二つ理由があります。一つ目は、ネット集客がきっかけで全国津々浦々から依頼が来るようになり、出荷作業や検査作業が増えたことで、職人にものづくり以外の仕事を依頼せざるを得ない状況になってしまったんです。これではいけないと、製造会社と販売会社を分けた結果、日本ツクリダス株式会社が販売会社として独立しました。二つ目としては色々やりたかったというのが本音です。単純に注文を受け、モノを作って、納品するだけの仕事から脱却したかったですし、父から言われた仕事をするだけではなく、自分自身で挑戦したいと思っていました。この考えに至った要因としては、スノーボード会社での経験が大きかったと思います。スノーボード会社では顧客が数十万人居たんです。その集客力と多くの顧客を抱えていることの可能性の大きさやその強さを感じました。目の前の一人ひとりのお客様に誠心誠意対応するのももちろん大切ですが、広い視野で見て、顧客層を広げることもこれからの時代には必要なことだと思いました。

 

―――そうなんですね。そういった新しい挑戦の中で、ソフトウェア事業部など事業の幅も広げられたのでしょうか。

角野社長:そうですね。一般的な町工場では顧客数は数社で一般的なのですが、我が社は500社もの顧客を抱えています。そうなると、顧客の納期管理や外注先管理といった管理体制を整える必要が出てきました。そこで、こういった管理というのはどの会社も必要としているでしょうし、これもサービスとして提供してみようと考えたのがきっかけです。

 

―――ネット集客を重要視されている理由をもう少し詳しく教えていただけますか。

角野社長:一つはリスクヘッジです。特定少数の顧客だけではなく多数の顧客を持っておくという観点です。もう一つは単純に成長のためです。我が社で言うと元々顧客数100社からスタートして、現在では500社を超えており、当然その分の成長があります。ネット集客以外の方法で、これだけ顧客数を増やすことは恐らく難しいと思います。またネット集客は、お客様からの依頼があって、それに対してこちら側が解決策を提示させて頂く形になるので、飛び込み営業などとは違って、お客様と対等に商売をすることが可能です。ネット集客にはこういった利点が多くあります。過去の製造業では集客をしてこなかったと思いますが、やはり現代ではネットを駆使することは重要ですし、それをハードルのように高難易度な事として捉えるのではなく、自分たちもそれができる時代なんだともっと楽観的に考えるべきだと思います。

観葉植物

社内の団結力を上げるためのシンボル「ファイブスターファクトリー」

―――それでは、次に「ファイブスターファクトリー」について概要を教えていただけますか。

角野社長:「ファイブスターファクトリー」というのは社内のシンボルです。社外向けというよりかは、社内向けとして、我が社がどういう会社なのかというのを全社員が理解し、社員個々が自ら動く指針となっています。このシンボルができたことによって、社内の団結力の向上や会社の理解度促進などといったインナーブランディングを進めることができました。「ファイブスターファクトリー」ができたきっかけというのは、たまたま私がこの星のマークとこの名前を思い付いて、この星に5つの意味を持たせようと考えたんです。その星が持つ5つのキーワードとその行動指針や意味を社員でディスカッションしてもらって決めてもらいました。一般的には逆ですよね。社内の課題があって、それをどのように解決するかを話し合い、その結果ビジョンや行動指針などに反映させていく。私たちはそれとは違う形を取りました。始めにモノがあって、そこに社員みんなで考えた意味を加えていったのですが、これが意外と楽しくできましたし、自分たちで考えたものだけあって浸透も促進されたと思います。また、その他にも求人に特に効果がありました。おかげさまで、今はそれ程人集めに苦労はしていません。

 

―――素晴らしいですね。それでは、引っ越しをしてまで御社に転職されたという、神岡様の動機は何だったのでしょうか。

神岡様: 元々は制作会社で働いていたのですが、色々な会社のキャッチコピーを作るよりも、一つの会社を好きになってもらうためのブランディングをしたいと思い転職活動をしておりました。そんな中で、日本ツクリダス株式会社に目が留まったのです。良い意味で町工場なのに町工場らしくなく、新しい取り組みにもチャレンジしている姿がとても印象的でした。その盛り上げるための活動を一緒にしていきたいと考えましたし、またこういった活動を発信もしていきたいと考えて、こちらに就職致しました。

談笑風景

仕事を楽しめる環境づくりと、新しいチャレンジ

―――SDGsを前面に打ち出されていますが、力を入れている分野は何でしょうか。

角野社長:8番の「働きがいも経済成長も」です。あとは職場環境の改善も含みます。生き生きと働ける環境や組織を創り、それを発信することで真似をしてほしいと思います。真似をしてくれる会社が増えれば増える程、楽しく働ける人が増えるだろうと考えています。

 

―――それでは、SDGsにおいて、他の製造業の経営者の方たちがすぐ真似できる御社の取り組みがあれば教えていただけますでしょうか。

角野社長:そうですね・・・観葉植物ですかね。あとはスポットライトを設置するとか。観葉植物は置くだけで職場環境がリラックスしている雰囲気になりますし、スポットライトの電球色をオフィスの白い電灯の中に入れるとガラッとオフィスの印象が変わります。すごく単純かも知れませんが、働く場所の雰囲気や見た目などの環境づくりは働く人のモチベーションに繋がると思います。あと、仕事場を綺麗に保つことも大切に思っています。仕事場が綺麗だと仕事がしやすいですし、効率良く仕事できますよね。私たちは会社をショールームとして捉え、常にお客様に見られても恥ずかしくない環境として綺麗に保つことを心がけています。

 

―――経営をする上で大切にしていることは何でしょうか。

角野社長:楽しいかどうかです。楽しく働いている人間にお客様は付いてきてくれます。働いている環境も和やかというか、気の張らない空気感でいます。会議も和やかで、意見が言いやすいですし、それ故に社員皆が仕事を自分ごととして捉えられますし、結果的に楽しいに繋がります。「楽しくする」という観点で言うと、朝礼でじゃんけんするんです。負けた人はゴミ捨てをするということくらいしか無いんですが、なんだか盛り上がりますね。

 

―――では最後に、日本の製造業のますますの発展のために必要なことは何だと思われますか。

角野社長:まず、製造業に限らず言うと、仕事を楽しめる環境づくりを提供することだと思います。製造業に関しては、チャレンジできる環境づくりが必要です。新しいことに挑戦をして、失敗したとしても怒るのではなく、その行動を褒める。そうすることで会社のレベルアップが図れると思います。例えば中国では、失敗するかもしれないけども、難しい仕事にどんどんチャレンジしていきますが、一方で日本の製造業は今までにないことが起こることを恐れてチャレンジしない、その結果、仕事がどんどん海外に流れて行ってしまう状況に陥ります。失敗を恐れず、どんどん新しいことにチャレンジをしていくことが重要だと思いますね。

日本ツクリダス株式会社について

会社の外観

日本ツクリダスは金属加工の鉄工所でありながら「ものづくりサービス企業」として、「金属加工」「生産管理システム」「デザイン制作」「オリジナルプロダクト(自社製品)」「コンサルティング」の5つのサービスを提供しています。

自社のものづくりを通じて製造業、とりわけ町工場に特化した販促強化、管理の円滑化をトータルでサポートするサービスを展開して、製造業を盛り上げることを目的に事業を行っています。

日々新しいビジネスやサービスをつくり、「こんな会社ありえへん!」と驚きと親しみを提供できる会社であり続けることを目指しています。

 

会社名:日本ツクリダス株式会社
所在地:大阪府
代表者:代表取締役 角野 嘉一
URL:https://www.netkojo.jp/

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